上野まで行って展覧会を二会場はしごした。はじめに訪れたのは東京藝術大学大学美術館で開催されている「黄土水とその時代」*1展。
藝大美術館はさほど会場面積は広くない美術館なので、展示も小規模ではあった。前室には当時の東京美術学校で教えていた藤島武二を始めとする教師陣の絵画、黄土水の師でもある高村光雲の彫刻など、黄土水に影響を与えたであろう作品群と、当時東京美術学校に留学していた台湾人留学生の自画像が展示してあり、見応えがある。
また、近年『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎』*2の翻訳が刊行されたことで日本でも一段と知名度を増した陳澄波の作品も、館蔵品が2点展示されている。ここは黄土水とともに、もう何点か台湾から持ってきても良いような気もしたが、2点だけでも見られたのは良かった。
まあ、それを言えば自画像が展示されている李石樵や何徳来などの作家の作品についても台湾には多く残っているので、それも合わせて見たかったと言ったら贅沢だろうか。展示スペースにも限りはあるし、展示テーマの焦点がぼやけるかもしれないけれど。
後室は完全に黄土水の展示スペースになっており、彫刻10点と資料が展示されている。《甘露水》をはじめ、彼の技術力の高さが分かる作品が多く、私は正直彫刻には疎いのだけれど、それでも非常に興味深かった。
その後、東京都美術館の「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」*3展へ。平日にも拘わらず、ご高齢の方を中心にかなり盛況だった。
田中一村の作品を見るのは今回が初めてで、非常に楽しみにしていた……のだけれど……うーん…… 必ずしも作品が悪いわけではなく、技量がないとも思わないのだけれど、何というか……
奄美移住後の作品も、題材の目新しさや色彩表現に見るべきものはありつつも、40代の作品よりは良いのだけれど、20代から30代の特に植物を題材にした作品ほどには見るべきところはないのでは、というのが正直な感想。
また、キャプションの文章が稚拙であったり、そもそも解説が少ない。また、あまりに似たような小品をただ作品数が多ければよいかのようにだらだらと並べているなど、展示手法にむしろ課題がある展覧会だと感じた。
それでも一村のネームバリューと都美の立地、宣伝によってお客さんはかなり入るんだろうけれど、どうなんだろうなあ……
気を取り直してランチは李厨の魚香肉絲。安いし美味しいので上野に行くといつもここで食べている気がする。何故か付け合わせを食べたあとの写真しかない。
*1:「黄土水とその時代 台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」展。黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校 | 東京藝術大学大学美術館 The University Art Museum, Tokyo University of the Arts
*2:柯宗明・著、栖来ひかり・訳(2024)『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎』岩波書店
*3:田中一村展 奄美の光 魂の絵画|東京都美術館、【公式】田中一村展 奄美の光 魂の絵画 Tanaka Isson: Light and Soul|2024年9月19日(木)〜12月1日(日)|東京都美術館