東京都美術館で開催中の『デ・キリコ展』*1、今月末で会期終了になってしまうのだけれど、駆け込みで見てきた。本当はもう少し早く見に行くつもりだったんだけれど、帰省前に人混みに行きたくないとかいろいろ理由があって割とギリギリに。
当初の日程だったら芸大の『東京藝術大学と中国人留学生〜李叔同から現代まで〜展』*2とか日本画廊の『山下菊二展』も合わせて行けたんだけど、まあ仕方ないね。
感想は大きく3点ある。やっぱり作家の個展というのは良いものだな、というのが一点。作品を年代順ではなくテーマ毎に章立てして展示する手法は個展との食い合わせがあまりよくない、少なくとも私は好きじゃないな、というのが一点。最後が、今まで私はジョルジョ・デ・キリコがすごい好きだと思っていたのだけれど、案外そこまででもないな、という発見ができたことだ。
最近だと『キュビスム展』*3のような、多くの作家の作品を数点ずつ持ってきて、運動の振り返りをする、みたいな展覧会は、色々な作家の作品に触れることができて、新しい発見ももちろんある。一方で、作家ごとの作品数が限られるので、ちょっと食い足りない感じもある。
その点個展だとその作家の作品が若いころから晩年まで見通すことができるので、作家の全体像の見通しがつくというか、どういう作家なのかが分かって良い。
前段と関係するのだけれど、作家の作風の流れを追う場合に、今回の展覧会のような、テーマごとの展示というのは非常に見づらく感じる。1920年くらいの作品の横に60年くらいの作品が置いてあったり、次の章に行くとまた30年くらいの作品が置いてあったりする。
ヨーロッパの展示ではこういったテーマ別の展示が流行っているというか、主流という話も聞くが、正直個展との相性はあまり良くないのではないかと思う。「○○美術館展」みたいな企画展のときはそれでいいんだと思うけれど、個展は基本的に年代順に追っていきたい。
デ・キリコの作品は今までもたまに見かける機会があって、結構好きだな、と思っていたのだけれど、今回画業全体を通して見てみて、思っていた印象とは少し違った。
広場を描いた作品が非常に印象に残っており、今まではそういった作品を目にする機会が多かったのだけれど、今回の展覧会ではそういった作品はむしろそこまで多くなく、室内を描いた作品が多かったのが意外だった。
もちろん、好きは好きだし、私が好んでいる超現実派の系譜に位置づけられる重要な作家でもあるので、今回非常に楽しかったのは確かなのだけれど、今まで思っていた「欧州の超現実派の作家ではデ・キリコが一番好きかも」というのは、必ずしもそこまでではないな、とも感じた。
広場を描いた作品を除くと、《オデュッセウスの帰還》が一番印象に残っている。上の写真の下段中央の作品だ。
これは本展に限ったことではないが、都内の話題になる企画展はやはり混んでいる。本展の込み具合は、都内の展覧会を見慣れている人に言わせれば大したことはないのだと思うが、普段地方の企画展や常設展にばかり行っている身からすると、どうしてもストレスを感じる。
上野駅の反対側の李厨でランチメニューの定食を食べた。辛いことで有名な湖南料理のお店で、店内では中国語が第一言語な、そういう感じのお店。以前はアラカルトで頼んだのだけれど、今回は定食。
木桶飯は湖南名物らしいのだけれど、食べやすさでいえば、普通に茶碗と皿で出てきたほうが食べやすい気はする。味はしっかり美味しくて、お値段もリーズナブルなので、辛い物が苦手でなければお勧め。